2006年06月21日

『蛍』 麻耶 雄嵩/幻冬舎

 



うわーやられたー。
麻耶にしてはすべての謎が簡単すぎると思ったんだ。
ラストまでいくと、その解り易ささえも読者をひっかける為だったんだとわかる。
さすが麻耶と言わせて頂きます。やられました。


以下ネタばれ満載。
 
  
 
自分の文章が読者にへただと思われている、その可能性までトリックに使うか。
参るわ。

まず、最後の生き残りが誰かって話ですけど、生き残ったのは大学生。
女性一人の身元不明者。

ということで、千鶴?と普通に考えたら思う。

でもちょっと待てよ。相手はあの麻耶雄高だ。
そんなに簡単か。という疑問が湧きあがる。

まず、女性は誰か。

作中で、この場で発見されてもおかしくない女性というと

「千鶴」「ふみえ」「小松響子」

の3名。
身元不明の女性一人が「ふみえ」だった場合。
じゃあ千鶴は生きてるかというとそうとも言い切れない。
『身元不明の』女性一人、であって身元が知れてる女性が遺体に
含まれていてもいいわけだし。
じゃあ、その場合千鶴の身元は確かか、というと。
千鶴が持っているのは弟の学生証。とはいえ、一応身元を確かめることはできる。

身元不明の女性一人が「小松響子」だった場合。
同じく千鶴が死んでいる可能性と、生きている可能性はあるわけですが
「ふみえ」は発見されていないことになる。
ただ、それだけ?
死蝋になってるのなんて、泥の中から発掘されればすぐには分からないよな。

身元不明の女性一人が「千鶴」
これはない。
発見された死体が佐世保を含む7名で内、身元不明の女性が一人。
生き残りは学生。
という情報から、「ふみえ」か「小松響子」のどちらかは7名のうちに
カウントされてると分かるし、それなら身元不明者は女性2名でなければ
おかしいでしょう。

と、いうことで、生き残りですがイニシャル縛りで千鶴かなとも思うし。
でも、麻耶だし(笑)
真相は闇の中ですか。

個人的には千鶴本命で、次点長崎だと思います。
長崎がラストで勇者になれたんだと、そう思えれば救いがあるかなと。


で、この作品には最初から、二つの罠が仕掛けられている。
“諫早=記述者”と思いこむ人と、“記述者=他の誰か”と思う人がいるのではないかと。
一人称で語られているのに、ときどき三人称で出てくる『諫早』の存在に気付いたら
この記述トリックは第一章で気付くと思う。
で、じゃあこの語り部は誰?
と思ったときに、フェアの精神でいくと、必ず人物表に載っている人物。
つまりアキリーズのうちの誰か。
不自然に記述者が他人の目で見ていない人物=長崎、とあぶりだされて。
そしたら、千鶴のジョージの共犯者=長崎というのはちょっと待て。となる。
しかも、長崎にはアリバイがあったはず=共犯者ではない。

て、ことで記述者=長崎は共犯者ではありえない。

というのは容易のわかるにしても、もうひとつの罠は分かりにくいよ。

地の文で「S女子大」「彼女」と表記されてる千鶴の一人称が「ボク」
だって、別にまあ、麻耶だし。で終わらせちゃうし(笑)
まさか、弟「松浦将之」の学生証持ってて(イニシャル縛り解消)男装してて、
それを記述者以外の他のメンバーが気付いてないなんて仕掛け…
気付かなかったよ。悔しい。

ちなみに、私しょっぱな登場人物表見て、イニシャルに気がついたとき
(全員NNとかSSとかなのに、千鶴だけがCM)
白状すると千鶴が犯人なんだと思いました。だせぇ(笑)

あと、佐世保が最初の夜に「看護師がいるから大丈夫」みたいな発言をしてますよね。
あれってふみえの事だったのか、と感心。
あんな細かい伏線回収するなんてな。


次は積ん読している『QED』にいこうと思ったのですが、
先に『上手なミステリの書き方教えます』浦賀和宏いきます。
もう、無駄に好き。浦賀。

---<追記>---

上記読み返してて思ったのですが、「身元不明の女性が誰か」
きっぱりと彼女は有りえない、と否定できるのって千鶴のみ。
ですよね。
ということで、やはり生き残りは確信をもって千鶴だと思います。

何故って?
それが麻耶だから(笑)
 
 
posted by 昌。 at 14:09| 福岡 ????| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書の日々。
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